親切なサンタの話

 クラスの子と給食を食べていると、何故だかサンタの話になった。皆、話に花が咲く。少し言い争いが合ったといえば、「サンタさんは山から来るんだよ」「ちがうよ、アイルランドから来るんだよ」「ちがうって、アイルランドの山でしょ」「そうそう!」とか。「サンタさんは空とぶんだよ」「ちがうよ、とばないよ」「何だって!」「だって、飛ぶのはトナカイでしょ」「そっか(一同爆笑)」いう程度のもの。サンタを信じ愛する子ども達。とてもいい雰囲気になった。
 ひとりクラスでいつも寂しい顔をしている子がいる。A子ちゃんは、仕事で親が単身赴任している。何かというと強い言葉が出たり、どこか荒んだ感じがするのだが、どうみても愛情で満たされていないだけの子である。日頃ぐっと甘えたい気持ちをこらえているのだ。その子が、サンタの話の時にはとても明るい顔になった。
「ねえ、先生。私サンタさんに毎年手紙書いてるの」
「何て書いたの?」
「去年はゲーム買ってってお願いしたら、くれたんだよ」
「そうなんだ。良かったねぇ」
「お姉ちゃんは○○で、私のは色違いでね、袋に入れておいといてくれたんだ」
「そうかぁ」
「でもね、この間クローゼットを掃除したら、送ったはずの手紙が全部出てきたの」
「え? 手紙届いてなかったの?」
「ううん、だってプレゼントくれたし、読んでくれていると思う。」
「そっかぁ。じゃあ、その場で読んでくれたのかなぁ」
「ママがね、たぶん返してくれたんじゃないかって。手紙を書いたときの気持ちを忘れないように届けてくれたんだと思うよって言ってた」
「じゃあ、今年も手紙書くの?」
「うん!」
 つまり、サンタさんは二度Aちゃんのもとを訪れてくれたのです。Aちゃんの優しい心のために。
 信じる限り、必ずどこかでサンタは生きているのだと思いました。